王国の鍵 アーサーの月曜日(ガース・ニクス 作、原田勝 訳)

 こちらは『サブリエル』と同じガース・ニクスの作品でも、もう少しライトな雰囲気の1冊。実はコロナ禍の状況を彷彿とさせる設定で、「睡眠ペスト」というインフルエンザのような謎の症状が蔓延する社会を描いています。何百年も前のペストがモチーフになっているから、なのです。

 でも、主人公のアーサーはそんな現実世界と、もう一つの世界を行き来するのです。病弱なアーサーは、大家族と一緒に引っ越してきたばかり。新しい学校に登校し、喘息持ちで走れないと伝えたにも関わらず熱血先生に、みんなと一緒に走るよう命じられ、ランニングすることに。ところがやっぱり喘息が出てきて、息も絶え絶え……と思ったらそこへ不思議な人物が現れるのです。そして、手帳と不思議な時計の針を手に入れます。

 この人物がやってきた世界は、人間のいる世界を第二世界と呼んでいます。で、マンデーというその人物の正体を知り、アーサーは第二世界を救うために立ち上がるのですが……。

 ヌーンやダスクなど、端役まで描写が丁寧で、作り込まれた世界観に引き込まれます。これが「マンデー」に、異世界では長い時間経過しているのだけれど、現実世界では月曜のみに起こったできごと、というのがいいです。

 結末はナルニアを彷彿とさせる感じ。

王国の鍵1 アーサーの月曜日―The Keys to The Kingdom